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コクラングループが、タミフルによる入院率減少効果は認めず、合併症減少効果の情報も得られずと指摘

2012-08-23

(キーワード:コクラン、ノイラミニダーゼ阻害剤、タミフル、ロシュ、入院率、合併症)


 2006年に国際研究組織「コクラン共同計画」のJeffersonらがタミフルのシステマティックレビューを“Kaiser Study”に基づいて行い、タミフルは重篤な合併症を減らすと結論した。これに対して林敬次医師が、“Kaiser Study”の評価の中心となっているのは未発表の臨床試験であると指摘し、見直しを求めた。2009年12月8日付の英国医学雑誌(BMJ)掲載のJeffersonらの論文(※1)では、その後のコクランレビューでは「タミフルの合併症予防の有効性は示されていない。その証明には、無作為化比較対照試験(RCT)が必要である」旨評価が変更されたと結論付けた。以上は、2009(※2、※3)・2010年(※4)の本欄で紹介した。
 Jefferson、浜六郎らのグループは、その後、ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル=商品名タミフル、ロシュ社製造販売、ザナミビル=商品名リレンザ、グラクソ・スミスクラインGSK社製造販売)についてのFDA・欧州・日本の規制当局が保有している未発表データを入手し、製薬企業ともやりとりした結果を、2012年1月18日付で論文として公表した。この論文はインターネットで公表されており(※5)、スクリップ誌2012年1月18日号がその内容を紹介していて(※6)、日本では「正しい治療と薬の情報」(TIP誌)2012年1月号(※7)が4頁にわたり紹介している。以下に、論文の要約を記す。(KK)
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 以前の本レビューでは、ノイラミニダーゼ阻害剤の臨床試験には相当大きな出版バイアス(タミフルの第3相試験の対象患者の6割分が出版されていない)と報告バイアスが存在することを報告したが、その後、未発表の臨床試験が多数あることに気付いたので、既存のレビューを更新し併合した。規制当局の情報をもとに、臨床試験を再構築し、データ内部の不一致について製薬企業に説明を求め、個々の患者データの提供を求めたところ、GSK社は提供すると答えた。しかし、ロシュ社は5回催促したが、完全な臨床研究報告書を提供しなかった。
 2011年4月12日までの検索で合計67件の研究データを入手したが、42件は情報が不十分かデータに矛盾があり、25件の研究(タミフル15件、リレンザ10件)データを分析した。タミフルに関しては、インフルエンザ様の症状が緩和するまでの時間は、プラセボ群の中央値は160時間(範囲125〜192時間)であったが、タミフル群では、約21時間これを短縮し、有意な差があった。しかし、入院率に関しては、0.84%で、プラセボ群との間に有意差がなく、入院率を減らす効果は認められなかった。合併症に関しては、適切に評価する詳細な情報は得られなかった。有害性に関しては、タミフルは吐気や嘔吐、リレンザは恐らく喘息の発症と関係している可能性が示唆された。我々は、個々の患者データをも含む臨床試験報告書の全体が提供されることを期待している。
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